2005-04-26: ヒトセミナー(2)
担当者 OtakeM 登録日時 2006-04-12 23:26 (4217 ヒット) 日時:2005年4月26日(火)13:00-14:30 場所:柏総合研究棟 発表者:鬼頭朋見 所属:東京大学人工物工学研究センター、東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻 博士課程二年(発表時) タイトル:ヒトの意思決定の合理性 キーワード:限定合理性、適応、行動のモデル化 書誌:鬼頭朋見,ヒトの意思決定の合理性.ヒトセミナー要旨集, no.2, pp.1, 2005.
(本発表ならびに本要旨について引用する際は、こちらをご利用ください。) 要旨: 本発表では,ヒトの意思決定に関する研究を“合理性”に着目して概観した. 新古典派経済学では,意思決定主体(以下エージェント)は完全合理的であるという前提のもとでモデル化されていた.すなわち(1) 問題に関する知識の完全性−行動の選択肢と各々の帰結を完全に知っている,(2) 選好順序の明確性−全選択肢に対して完全な選好順序をもっている,(3) 最適化能力−いかなる複雑な計算を要しても最適解を導出する能力を有し,間違いを犯さない.しかしながら,このような前提に基づいたモデルは実際の人間の意思決定とは乖離していることが指摘されており,完全合理性に代わる意思決定の性質として,サイモンの指摘した限定合理性が,行動経済学など近年の経済学におけるエージェントモデルの中心となってきている.実際の人間の限定合理性のモデル・理論の代表として,満足化原理やプロスペクト理論,近道選び思考などが挙げられており,被験者実験に基づき実際の人間の意思決定を分析する実験経済学は,これらのモデル・理論をより確固たるものにする,もしくは新たなモデルを確立していくであろう. 限定合理性はまた,人工エージェントの性質として設計・導入することで,人工マルチエージェントシステムに柔軟性・適応性を与える可能性もあり,実世界の不完全情報下で有効な意思決定解を導出し得るシステムを設計すべく,積極的に考慮していく必要があると考えられる. 参考文献: [1]Simon, H. A. (1955):”A Behavioral Model of Rational Choice,” Quarterly Journal of Economics 69, 1955. Reprinted in Models of Man, social and rational, John Wiley and Sons, 1957. [2]Simon, H. A. (1997a): “Administrative Behavior,” 4th ed., Free Press, 1997 (1st ed., 1947). [3]Simon, H. A. (1997b): “Models of Bounded Rationality,” vol.3. Empirically Grounded Economic Reason, MIT Press, 1997. [4]サイモン H. A.(1987):“意思決定と合理性,”(佐々木恒男,吉原正彦訳),文真堂,1987. [5]サイモン H. A.(1989):“経営行動”第3版(松田武彦他訳),ダイヤモンド社,1989. [6]Kahneman, D., A. Tversky (1974): “Judgment under uncertainty: Heuristics and biases,” Science 185, pp.1124-1131. [7] Kahneman, D., A. Tversky (1979): “Prospect theory: an Analysis of decision under risk,” Econometrica 47 (2), pp.263-291. [8]Tversky, A., D. Kahneman (1982): ”Evidential impact of base rates,” in D. Kahneman, P. Slovic and A. Tversky ed. Judgment under uncertainty: Heuristics and biases, Cambridge University Press. [9]Stuart J. Russell, Peter Norvig: “Artificial Intelligence: A Modern Approach,” Printice Hall, 1995. [10]多田洋介:“行動経済学入門,”日本経済新聞社,2003. |